【R8】新港から届く、真夏の恵み!パイナップル
飛騨市では、パイナップルは田畑でよく見かける農作物ではなく、スーパーでもあまり見かけないため、馴染みの薄い果物かもしれません。しかし、新港の人々にとって、パイナップルはごく身近な果物の一つです。道端の果物店やスーパーマーケットの生鮮食品売り場はもちろん、道路沿いにも、パイナップル畑が整然と並んでいる光景を見ることができます。真夏の強い日差しがパイナップル畑を照らす中、青々とした厚みのある葉が大きく広がり、黄金色のパイナップルが少しずつ熟していきます。新港の農家にとって、これらのパイナップルは単なる食卓の果物ではありません。この土地が私たちにもたらしてくれる、かけがえのない恵みなのです。

飛騨地域でパイナップルがあまり見られないのは、パイナップルが熱帯・亜熱帯の果物であり、生育期間が約15~18か月と長く、一年を通して温暖で、水はけが良く、パイナップルの栽培に適した土壌の環境が必要だからです。飛騨地域は標高が高く冷涼な地域に属しており、冬は厳しい寒さに加えて雪も降るため、パイナップルを栽培することができません。一方、新港郷はパイナップルの栽培に適した気候と環境に恵まれています。かつて新港郷の溪北村では、農業用水が不足していたため、地域の農家は干ばつに強いパイナップルへと作付けを転換しました。その結果、溪北村は新港郷の中でもパイナップルの生産量が最も多い地域となりました。

新港で栽培されているパイナップルは、主に「台農17号」と「台農16号」の2品種です。一般的に、台農17号は「金鑽パイン」、台農16号は「スイートパイン」と呼ばれています。収穫期はおよそ5月から8月です。「金鑽パイン」は、現在台湾で最も広く栽培されている品種で、皮が薄く、果肉がきめ細かいうえ、甘みと酸味のバランスが良いのが特徴です。一方、「スイートパイン」は、台湾の数多くあるパイナップル品種の中でも、特に果肉がきめ細かく、しっかりとした食感があり、糖度が高く、酸味がほとんどない品種です。台湾のパイナップルは国内市場で多くの消費者に親しまれているだけでなく、日本をはじめとする海外にも輸出されています。台湾のパイナップルが海外でも味わわれていることは、とても誇らしいことですね。

しかし、従来のパイナップル農家は、栽培して販売するという単純な生産・販売にとどまっていることが多く、市場の影響を受けやすいという課題がありました。例えば、生産過剰や特定の輸出市場への依存などによる価格変動によって、農家が一年半かけて育ててきたパイナップルが、努力に見合った収入につながらないことも少なくありません。こうした課題に直面する中、農家たちは変化の必要性を感じるようになりました。そこで、農会の支援を受けながら、従来のパイナップル産業からの転換を進め、六次産業化やバリューチェーンの構築を通じて、パイナップルの付加価値を高め、多様な販売・マーケティングに取り組んでいます。これにより、農家がより主体的に販売や事業展開を行えるようになるとともに、収益の向上にもつながっています。

また、農会は農家と協力し、食農教育の体験活動も推進しています。参加者は実際にパイナップル畑を訪れ、パイナップルについて学ぶことができます。農家も、自らの栽培経験を伝えることで、生産地と食卓との距離を縮めています。食農教育だけでなく、農会ではパイナップルを活用した特色ある商品の開発も進めています。例えば、パイナップル酢、パイナップルとお茶の香りを組み合わせたスパークリングワイン、パイナップルの炭酸飲料などがあります。さらに、持続可能な農業の実現に向けた取り組みも進められています。パイナップルの葉から繊維を取り出して手すき紙を作ったり、パイナップルの茎からバイオテクノロジーを活用して酵素を抽出したり、パイナップルの残渣を有機肥料として再利用したりする取り組みです。こうした取り組みは、農業廃棄物の削減につながるだけでなく、パイナップル産業に新たな価値と多様な可能性を生み出しています。

台湾では、パイナップルは台湾語で「旺來(オンライ)」と発音し、「幸運が次々とやってくる」という意味につながることから、縁起の良い果物として親しまれています。飛騨市の皆さんにとって、パイナップルは少し馴染みの薄い南国の果物かもしれません。しかし、台湾の人々にとってパイナップルは、日々の暮らしの中にある、身近で親しみのある味です。

畑に並ぶ一株一株のパイナップルは、約一年半もの時間をかけて育てられ、ようやく収穫の時を迎えます。その一つひとつには、農家の方々の努力と想いが込められています。飛騨市の皆さんも、もし機会があれば、ぜひ一緒にパイナップル畑へ足を運び、この大地が育んだ情熱を感じてみてください。そして、新港から届くおいしさを味わいながら、たくさんの「旺來」を迎えてみてはいかがでしょうか。




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